イタリア漫画『REQUIEM』の感想 全一巻なのがもったいなく感じる良作
イタリアのある書店のマンガコーナーで偶然見つけた作品です。
作者:Fabrizio Cosentino (ファブリツィオ・コゼンティーノ)
出版:SHOCKDOM
イタリアでは毎年ルッカコミックスやロミックスといったマンガイベントが開かれています。街中にマンガ専門店が数店舗見られることからも人気が高いコンテンツのように感じます。
マンガといえば日本というイメージがありますし、実際多くのマンガがイタリア語版で発売されています。一方でイタリア人が描いたマンガというのももちろんあります。日本にはよっぽどのことがない限り入ってこないであろうこうした作品を読む機会があったので感想を書きます。
海外漫画の印象
まず初めに自分の持っていた海外の漫画やアニメなどの印象について
やはりこういったビジュアルのある作品において絵柄はかなり重要だと思います。特に海外のキャラクターデザインは日本とは違った独特さがあり、そこで手に取らないという人もいるでしょう。ただ日本でも「ジョジョは絵柄がちょっと…」みたいな人はいるので国産ならいいわけでもないのか。
ただ書店やイベントなどで見てみると日本人でも馴染みやすそうな絵柄はけっこうあります。数は少ないですがフランスのマンガ(バンド・デシネ)『ラディアン』のような少年誌で連載してそうな絵柄の作品も見られます。海外の出版の今後の目標や作者たちの考えはわからないですが、もしかしたらこうした絵柄が増えていくかもしれないですね。
絵柄に壁がありそうな感じはしますが、物語に関しては国や文化の特色がよっぽど強く出ない限り受け入れらている印象があります。それこそマーベル作品なんて原作未読で映画は見ている人が多いのではないでしょうか。自分もそうですし。物語は誰が書いても面白いものは面白いということなんですかね。
マンガそのものについて一番違うと感じるのは値段の高さです。ここで紹介する『REQUIEM』もサイズはA5で白黒。日本のマンガと規格は同じだが値段は8ユーロ。これは2020年3月で日本円で955円。特別版ではなくこの値段、これは高い。しかし海外マンガはフルカラーなものも多く、大判サイズでカラーになると一冊20ユーロとか普通に見かけます。なのでせっかく面白そうな作品を見つけてもガツガツ買える値段ではないので見送ったりすることも多いです。
そのかわり、フルカラーのマンガなどは画集を買ったような満足感もあるので高くても手を出してしまうんですよね。
感想の前に
まず意味があるかはわからないですがネタバレ無しで感想を書こうと思います。
調べたところ日本語版はもちろん無く、日本のAmazonでも売っておらず、イタリア版Amazonでは売り切れ、唯一手に入れられそうなのはSHOCKDOMという出版社のサイトで取り寄せるくらい。
自分で読むには壁が厚すぎる状況です。
ただ万一ここに流れ着き、さらに自分で読んでみようと思ったのにネタバレされたら悲しいかもしれない。
なので一応ネタバレ無しで。
あらすじ
主人公は二人。
魔女と兵士です。
死んだ者の魂は、また別の者に生まれ変わるというサイクルで世界は成り立っていました。しかしある人物がこれに反し、死の無い世界、全員が不死になる世界に変えてしまいます。
魔女《NIVEH》と兵士はこれを打倒し、魂の循環する世界に戻すために旅をするという話です
感想
読み終わった印象としては、いわゆるエピソード0のような話だと感じました。
誰もが知っている有名な人、というか概念の誕生秘話です。
魔女と兵士の戦闘場面
たった一巻なので主要な登場人物もそこまで多くなく 、街やその世界にいる人、世界そのものの描写は本当に必要な部分だけという感じ。簡潔でスピード感があり読みやすいですが、要所で物足りなさを感じてしまう部分もあります。
上で述べたように絵柄になじめるかがマンガを読むうえで結構重要な要素だと自分は思いますが、この作品は個人的に好きな絵柄でした。主人公の魔女《NIVEH》や仲間の兵士のデザインはカッコいいですし、背景の書き込みや戦闘シーンの迫力など見ても満足度高いです。
それだけにボスの部下やラスボスなど、強敵との戦いをもっと長く見てみたかった。
それでも読後感は非常に良いものなのでやはり多少苦労して読んで良かったと思います。
この作者は他にも『Edge of Sky』など作画で参加した作品もあるみたいなので今度はそっちも読んでみたい。